「同じミスが、また起きた」
そう思った経験、ありませんか?
製造業の現場で20年、私はこのセリフを何度も口にしてきました。
そして、私自身が「なぜなぜ分析される側」だった経験も、何度もあります。
「なぜ?」を繰り返されても、答えに詰まる。
「いや、見間違えたって言ってるじゃないか」と心の中で叫んだ日もあります。
今日は、そんな私が現場で実際に体験した、**なぜなぜ分析の具体例**を一つ、リアルに書きます。
教科書的な解説ではなく、現場の物語として。
こんにちは、おかもちです。製造業で生産管理+営業を兼務する、岡山在住・アラフィフ会社員です。
「業務改善5つの力」シリーズの気づく力編④「責めない目」に続く、編⑤の話です。
伝票ミスが起きた日 ── 朝の現場で何が起きたか

この話は、私が働いてきたどの職場でも、形を変えながら起きた話です(数値は例です)。
ある朝、お客様から電話が入りました。
「届いた荷物の数量が違うんですけど」
伝票には「5」と書いてあるのに、現場では「3」と見間違えて、3個しか梱包・出荷していなかった。
お客様には2個足りない状態で届いていたんです。
その瞬間、私の頭をよぎったのは、「同じミスが、また起きた」でした。
正直、「またか」という気持ちもあった。
でも、お客様には迷惑をかけている。それが何より大事です。
すぐに不足分を用意して、再度お届けしました。
この対応は、ミスが起きた時の最低限の責任。ここで「終わらせる」職場は多い。
でも、ここで「終わり」にすると、来週も再来週も、また同じミスが起きます。
「気をつけろ」では済まなかった理由
普通なら、こうなります。
「次から気をつけて」
「ダブルチェックを徹底して」
「集中力を切らさないように」
でも、これで現場が変わったことは、20年で一度もありません。
注意喚起は、その場の空気を引き締めるだけ。1週間も経てば、また同じ条件で同じミスが起きる。
だから、今回は違うアプローチを試しました。
トヨタ生産方式の「なぜなぜ分析」── 「なぜ?」を5回繰り返して、真因に届く思考技術です。
なぜなぜ分析を5段階でやってみた

事象:**伝票には「5」と書いてあるのに、作業者が「3」と見間違えて、3個しか取らなかった。**
1回目から始めます。
なぜ① なぜ「5」を「3」と見間違えた?
→ 数字がよく見えなかったから。
なぜ② なぜよく見えなかった?
→ 現場が暗かったから。
※もちろん、複数の原因が考えられました。「数字が小さい」「手書きで読みづらい」「汚れていた」など。でも、その日の状況を一つずつ確認していくと、最も影響が大きかったのは 照度不足 だったんです。
なぜ③ なぜ現場が暗かった?
→ ライトが届かない場所だったから。
なぜ④ なぜライトが届かない場所があった?
→ ライトの配置が、過去のレイアウトのままだったから。
なぜ⑤ なぜ配置が見直されなかった?
→ 「数字が見えにくい」という違和感を、これまで誰も声に上げていなかったから。
5段階で見えてきた真因は、「現場の照度不足と、声に上がらない違和感」でした。
真因への対策 ── ライト追加までの道のり

原因が分かったら、すぐ動きました。
幸い、私の現場には移動できるライトがありました。
別の場所で使われていたものを、伝票チェックの場所に移動するだけ。費用はゼロ円です。
提案して反対する人はいませんでした。「なぜなぜ分析」で真因まで届いていたので、「ライトを増やす」の必要性が論理的に伝わったんです。
「気をつけろ」では誰も動かなかったのに、「真因が照度だから、ライトを動かそう」なら誰でも納得できる。これが、なぜなぜ分析の力です。
設置後、現場から出てきた声は、こうでした。
「あ、明るくなって見やすくなった」
そして、ここで私が一番痛感したこと。
それは、現場では『少々暗い』は意外と気にしていない ということでした。
毎日同じ場所で作業していると、「ちょっと暗いな」は当たり前になってしまう。
慣れが、気づきの最大の敵。だから、ミスが起きた時こそ、「いつもの当たり前」を疑う絶好のチャンスなんです。
結果:再発防ぐ、それ以上の効果
ライト追加後、同じ伝票の見間違いミスは **発生していません**。
これは数字としても、現場の安心感としても、確実な変化です。
さらに思いがけない副次効果もありました。
- 他の作業の精度も微妙に上がった(明るいと作業全般がやりやすい)
- 現場の「ちょっとした不便」を声に上げる文化が芽生え始めた
- 「真因に対策すれば、本当に再発ゼロになる」という体験が、なぜなぜ分析への信頼を作った
移動できるライト1台 × 費用ゼロ円。
それだけで、現場のミスがゼロに、文化が少し前向きに変わる。これが、なぜなぜ分析の真の威力です。
正直に書きます ── 私が「責められた側」だった話

ここまで、なぜなぜ分析の効果を書いてきました。
でも、正直に書きます。私自身も、最初は「責められている」と感じる側でした。
過去、私が現場で何かミスをした時、上司に「なぜ?」を繰り返されたことが何度もあります。
「なぜミスしたの?」
→ 「見間違えました」
「なぜ見間違えた?」
→ 「集中していませんでした」
「なぜ集中していなかった?」
→ 「…」
私の中ではすでに「見間違えたのが原因」と思っているのに、それ以上「なぜ?」を重ねられると、これ以上なぜと言われても ── という感覚に陥るんです。
何度やったか思い出せないくらい、この経験があります。
当時の自分は、「自分が責められている」「これ以上答えても誰も得しない」と感じていました。
「なぜなぜ分析って、結局自分を追い詰める道具なのか?」と疑いの目を向けたこともあります。
過去の自分がいるから、最初に必ず伝える言葉

今、私が部下や同僚と一緒になぜなぜ分析をやる時、最初に必ず伝える言葉があります。
「これは責める目的じゃない」
なぜこの一言を最初に置くのか?
それは、**過去の私と同じ気持ちを持つ人がいる**と、私が分かっているからです。
「責められている」と感じる人は、心を閉ざします。
心を閉ざすと、「なぜ?」への答えも表面的になります。
表面的な答えからは、真因は永遠に見えません。
だから、最初の一言で「これは責めるためじゃない、一緒に真因を見つけるためだ」と伝える。
これがあるだけで、なぜなぜ分析は「圧迫の道具」から「協力の道具」に変わります。
ここから学んだ「なぜなぜ分析」3つのコツ
私が現場で20年やってきて、なぜなぜ分析を成功させる3つのコツを、最後にお伝えします。
コツ① 最初に「責める目的じゃない」と必ず伝える
これだけで、相手の心理的ハードルが大きく下がります。
過去の自分と同じ気持ちの人を、最初の一言で救いに行く。
コツ② 人ではなく事実・環境を深める
「あなたが悪い」ではなく、「現場の何が、ミスを生んだのか」を見る。
これは編④「責めない目」と完全に同じ姿勢です。
コツ③ 答えに詰まったら、無理に詰めない
「これ以上なぜと言われても…」と相手が感じている時、無理に詰めても答えは出ません。
そんな時は、別の角度から問いを変える。「環境はどうだった?」「道具は十分だった?」と、人ではない方向に視点を移す。
まとめ:今日から試せる「なぜなぜ分析」5ステップ

ミスや不具合が起きた時、こう動いてみてください。
ステップ① 最初に「責める目的じゃない」と伝える
すべての出発点です。
ステップ② 「なぜ?」を1回問う
表面的な原因を書き出す。
ステップ③ さらに「なぜ?」を重ねる(目安5回)
答えに詰まったら、人ではなく環境・仕組みへ視点を移す。
ステップ④ 真因(根本原因)を見極める
複数の原因が考えられる場合、「最も影響が大きい一つ」を選ぶ。
ステップ⑤ 真因に対策する(人ではなく仕組みを変える)
「気をつけろ」ではなく「移動できるライトを動かす」のような、具体策に。
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なぜなぜ分析は、トヨタ生産方式で生まれた思考技術です。
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業務改善で「真因に届かない」と感じている方の、最短の一冊です。
最後に
同じミスが繰り返される現場で、「気をつけろ」と言い続けるのは、もうやめにしませんか。
なぜなぜ分析で真因まで届けば、真因に対策すれば、再発はゼロに近づけます。
私のように「責められた側」の経験があるなら、なおさら、その経験を活かせるはずです。
最初の一言「責める目的じゃない」が、なぜなぜ分析を「圧」から「協力」に変えます。
明日の現場で、もしミスや不具合があったら、ぜひ「なぜ?」を5回試してみてください。
次回は気づく力編⑥(最終回)で、シリーズの集大成をお伝えします。
今日もここまでお読みいただき、ありがとうございました。おかもちでした。


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