「今の説明で、ちゃんと伝わったかな?」
一度はそう思い返したこと、ありませんか?
こちらは丁寧に話したつもり。相手も「はい」と答えてくれた。でも、後で確認したら違うことをやっていた。──そんな場面、誰しも経験しているはずです。
こんにちは、おかもち(48歳)です。
いろんな現場で20年。製造業の生産管理と営業を兼ねながら、現場の「モヤモヤ」を改善するヒントを発信しています。
前回の伝える力編①では「伝える目的の決め方」を書きました。何のために伝えるのかを明確にする話です。
今日は、その次のステップ。──相手に届く「伝え方」の選び方です。
この記事を読めば、相手のレベル・手段・タイミングを意識して、伝わり方を一段アップさせるコツが手に入ります。
なぜなら、私自身が3つの軸で伝え方を工夫してきた経験があるから。インボイス制度の社員周知・突然の声かけ問題・「急いでます」が伝わらない問題 ── 3つの実体験を通して、伝える力の次の一歩を一緒に見ていきましょう。
「言いたいことを言う」だけでは、足りない

編①で「何のために伝えるのか」、目的を明確にする話をしました。これだけでも、伝え方は大きく変わります。
でも、それだけでは、まだ足りないんです。
同じ内容を、同じ目的で伝えたとしても、相手によって届き方が違います。新人とベテラン。じっくり話を聞ける人と忙しい人。文字で読みたい人と口頭で聞きたい人。── 人は、それぞれ受け取り方が違うんです。
だから、伝え方は「一通り」ではなく、相手と状況に応じて選ぶもの。
「言いたいことを言う」だけでは、足りないのです。
今日は、私が現場で工夫してきた3つの軸 ── 相手のレベル・手段・タイミング ── を、実体験とともにお伝えします。
軸1:相手のレベルに合わせる ── インボイス制度の周知

最初の話は、インボイス制度(適格請求書)が始まった時のことです。
会社の経理に関わる重要な制度なので、社員全員に周知しなければならない。私はその役目を担っていました。
ところが、いざ説明しようとすると、これが難しい。
インボイス制度の中身は、細かく言えばかなり複雑です。適格請求書発行事業者の登録、課税事業者と免税事業者の違い、経過措置、仕入税額控除の要件 ── 正確に伝えようとすると、専門用語だらけになります。
でも、社員全員が経理担当ではありません。製造部門の人もいれば、営業の人もいる。みんなに同じレベルの説明をしても、頭に入らない。
そこで私は、こうしました。
ポイントを3つ程度に絞り込んで、**A4一枚の資料**を作成したんです。
「自分の業務にどう関係するか」
「何を確認すべきか」
「分からない時は誰に聞くか」
この3点だけ。あとは、必要になった時に詳しく聞いてもらえばいい。経理担当でない人にとっては、これで十分なんです。
難しい話を、難しいまま全部伝えようとしない。**相手のレベルに合わせて、伝える情報量を絞る**。
難しい話は、3ポイントに絞り込む。
これが、私が学んだ最初の軸です。
軸2:手段を選ぶ ── なぜ「手渡し」にしたか

インボイスの資料を作った後、もう一つ工夫したことがあります。
配り方です。
普通なら、メールで一斉送信するでしょう。それが一番早いし、効率的に見える。でも、私は違う方法を選びました。
**全員に、手渡しで配って回ったんです。**
そして、誰に渡したかをチェックリストで管理し、抜け漏れがないように。
なぜ手渡しを選んだか。理由は3つあります。
- 「読んだ」が確認できる ── メール一斉送信だと、開封されないまま埋もれる可能性が高い。手渡しなら、その場で受け取ったことが確認できる
- その場で質問が出やすい ── 渡しながら「何か不明点ありますか?」と聞ける。メールだとなかなか返ってこない
- 「重要度の高さ」が伝わる ── わざわざ手渡しで配ることが、「これは大事な話」というメッセージそのものになる
同じ情報でも、伝える手段によって、相手の受け取り方は大きく変わります。
手渡し+チェックで、抜け漏れゼロ。
口頭・紙・メール・チャット・対面 ── 状況に応じて、最適な手段を選ぶ。これが2つ目の軸です。
軸3:タイミングを見極める ── 集中している人に、声をかけない

3つ目の軸は、タイミングの話です。
「おい、○○君」──。
忙しい時に限って、タイミング悪く声をかけられること、ありますよね。私もずっと、そういう経験をしてきました。
でも、ある時から、私は逆を意識するようになりました。
**相手が作業中・集中している時には、声をかけずに待つ**。
なぜか。自分が「声をかけられた側」だった時の経験を、何度もしてきたからです。
集中して計算していた数字。
頭の中で組み立てていた段取り。
ちょうど思い出していた連絡事項。
声をかけられた瞬間、これらが全部、頭から飛んでしまうんです。何をしていたか、どこまでやったか、まったく分からなくなる。
そして、これが何度も起きると、ミスにつながります。
入力ミス、確認漏れ、依頼忘れ ── **突然の声かけが、ミスの原因になったことも何度もあります**。
だから、相手の手が止まるまで待つ。これは、ちょっとした気遣いではなく、相手のミスを防ぐ実用的な工夫でもあります。
集中している人には、声をかけずに待つ。
もちろん、緊急時は別です。でも、急がない用件なら、5分待つだけで相手のパフォーマンスを守れます。
★「急いでます」だけでは、伝わらない ── 抽象と具体の壁

もう一つ、ぜひお伝えしたいことがあります。これは、3つの軸とは少し違う、けれど現場で頻繁に起きる問題です。
「急いでいるので、早めにお願いします。」
こう伝えたこと、ありませんか?私も、何度もありました。
でも、これだけでは伝わらないんです。
現場の人は、自分の都合のよい解釈をすることが、結構あります。「早めに」と言われても、「今やっていることが終わってからやろう」「他の人の作業が終わってからでいいか」と、その人なりの優先順位で動いてしまう。
こちらは「今すぐ」と思っているのに、相手は「今日中」「明日まで」と解釈する。
ズレが、起きてしまいます。
解決策は、シンプルでした。
**「何日の何時までに欲しいです」と、具体的に伝える**。
「明日の朝9時までに必要です。」
「今日の15時までにお願いします。」
こう伝えると、相手は順番を変えて対応してくれます。「あ、それなら今やっている作業を一時中断しよう」と判断できる。
抽象的な言葉では、相手の頭の中に「絵」が描かれません。
具体的な時刻を入れた瞬間、絵が描けて、行動が変わるんです。
「急いでます」だけでは、伝わらない。
「いつまでに」を明確にする ── これは、3つの軸の上に乗る、もう一つの大切な工夫だと思っています。
「相手がどう受け取ったか」を確認する

最後に、ここまでの工夫を活かす一手をお伝えします。
それは、「相手がどう受け取ったか」を確認することです。
どんなに工夫して伝えても、相手の頭の中で違う絵が描かれることがあります。だから、伝えたら終わりではなく、**確認するまでが「伝える」**。
確認の方法はシンプルです。
- 「分かりましたか?」だけでなく「念のため、復唱してもらえますか?」
- 「いつまでにやりますか?」と、相手の言葉で締め切りを言ってもらう
- 後日「あの件、進んでますか?」と一声かける
このひと手間が、「伝えたつもり」を「伝わった」に変えます。
📖 もう一歩深く学びたい方へ
7つの習慣 ── Win-Win を考える(第4の習慣)
「相手と自分の両方が満足する」哲学を、もっと深く学びたい方へ。
7つの習慣の第4「Win-Win を考える」── 一方的な伝え方ではなく、相手と自分の両方を尊重する考え方の源流です。
私が20年、何度も読み返している一冊を紹介しておきます。
次回から、伝える力編③へ
シリーズ次章「伝える力編③」では、もう一歩踏み込んだ「伝え方の工夫」をテーマに書いていきます。
今日の話が「相手と状況に合わせる」だとすれば、次回は、さらに具体的な現場での工夫の話です。引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。
相手に合わせて伝え方を変える ── 良い仕事の流れをつくるために
最後に、私の本音を一つ。
相手に合わせて伝え方を変える工夫が、良い仕事の流れをつくります。
同じ内容を、同じ言葉で、誰にでも伝えようとする。これは一見、平等で公平に見えるかもしれません。でも、実は逆。相手によって受け取り方が違うのに、伝え方を変えないのは、結果的に「伝わらない」を量産します。
レベル、手段、タイミング、そして具体性。
ちょっとした工夫の積み重ねが、現場の流れを軽くしてくれます。
今日も、机の上から。
半径1m以内、1秒から、引き算から、流れから、他者から、目的から、そして、相手から。
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伝える力編
- 伝える力編①|相手の行動が変わる「伝える目的」の決め方 5選
- 伝える力編②(この記事)
前章「考える力編」全6本
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- 考える力編②|現場改善の事例4選
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