「あれ、違う順番でやってる…?」
一日のうちにたくさんの作業を頼んだ時、しばらくして確認に行ったら、全然違う順番で進めていた。──そんな経験、ありませんか?
作業する人は、決して手を抜いているわけではありません。むしろ、一生懸命やってくれています。でも、口頭で伝えた順番は、頭の中ですぐに薄れてしまうんです。
こんにちは、おかもち(48歳)です。
いろんな現場で20年。製造業の生産管理と営業を兼ねながら、現場の「モヤモヤ」を改善するヒントを発信しています。
前回の伝える力編②では「相手に届く伝え方の選び方」を書きました。レベル・手段・タイミングを意識して伝える話です。
でも、それでも伝わらない瞬間があります。
そんな時に効くのが ── 図解です。
この記事を読めば、言葉だけでは届かない時に、図解で相手の頭の中に「絵を渡す」3つの工夫が手に入ります。
なぜなら、私自身が現場で図解に救われてきた経験があるから。作業順番メモ・トラックの仕分け図解・検査の順番シート ── 3つの実体験を通して、伝える力の次の一歩を一緒に見ていきましょう。
「10行の説明」より「1枚の図」

言葉で説明していると、つい長くなってしまいます。「まずこれをやって、次にこっち、その後あれをやって、最後にこっち」── 説明する側は、頭の中で順番がクリアです。
でも、聞いた側はどうでしょうか。
耳から入った言葉は、目に見えない形で記憶に残ります。10行の説明を聞いたら、頭の中で10行を組み立て直す必要がある。一度聞いただけでは、なかなか定着しません。
これが、1枚の図だったらどうでしょうか。
四角と矢印、いくつかの言葉。それだけで、聞き手の頭の中に「絵」がそのまま入ってきます。組み立て直さなくていい。見るだけで分かる。
「10行の説明」より「1枚の図」。
これが、図解の最大の力です。今日は、私が現場で実際に使ってきた「3つの図解の工夫」をお話しします。
工夫1:作業順番をメモで渡す ──「A→B→C→D」

一日のうちに、たくさんの色んな作業をしてもらうことがあります。
口頭で「これをやってから、こっちの、その後、あれをやって…」と伝えると、その場では「分かりました」と返ってきます。でも、しばらくして確認に行くと、違う順番で作業していたりするんです。
作業する人は、決して怠けているわけではありません。一生懸命やってくれている。でも、人は忘れます。口頭で言われた順番は、別の作業に集中している間に、ふっと消えてしまうんです。
これは、相手の問題ではなく、伝え方の問題です。
そこで私は、メモを渡すようにしました。
「A → B → C → D」。
こんなふうに、順番を矢印でつないで紙に書く。ただそれだけです。作業中、ふと迷ったら、メモを見ればすぐに思い出せる。
結果、何が変わったか。
メモで順番を渡せば、思い出す時間もゼロになります。
「あれ、次なんだっけ?」と止まる時間がなくなる。私に聞きに来る時間もなくなる。作業する人にとっても、私にとっても、お互いに楽になる工夫でした。
工夫2:トラック仕分けを図解で示す

2つ目は、倉庫業をしていた頃の話です。
トラックでたくさんの荷物が入荷することがありました。商品の型がたくさんあって、それがぐちゃぐちゃの順番で積み込まれて到着するんです。
トラックのドライバーは、私の現場の事情を知りません。用意したパレットに、運んできた順にぐちゃぐちゃに降ろして帰っていく。それで、ドライバーの仕事は終わりです。
残されたのは、ぐちゃぐちゃに積まれた荷物の山。
それを型番ごとに仕分けし直すのは、私の仕事でした。
毎回、これに時間がかかる。
何とかならないか、と考えました。
そして、思いついた解決策が、図解です。
パレットの位置を示した図に、「**型A → Aパレット**」「**型B → Bパレット**」と書いて、現場に貼っておく。そして、トラックのドライバーが来た時に、こう説明しました。
「箱に書いてある型番を見て、この図の通りに降ろしてもらえますか?」
図を渡しただけで、何が起きたか。
ドライバーは、丁寧に型番ごとに仕分けして降ろしてくれるようになったんです。
「Aの箱はここ、Bの箱はここ」と、図を見ながら確実に。私が後から仕分けし直す必要が、なくなりました。
図解一つで、仕分けの手間がゼロに。
もし「型番ごとに仕分けして降ろしてください」と口頭でお願いしていても、たぶんドライバーは「どの型がどこ?」と混乱したはずです。図にしたから、迷いなく動けた。
言葉で伝えるより、図を渡す方が、よっぽど親切でした。
工夫3:検査の順番シート ── 失敗から学んだこと

3つ目は、私の失敗から生まれた工夫です。
ある日、検査をたくさんしてもらわないといけない日がありました。時間も限られている。私は、いつものように検査担当者に伝えました。
「いつもどおり、検査お願いします。」
これで通じるはず、と思っていました。
でも、しばらくして作業を見てみると、ムダな動きが発生していたんです。
- 一度見たところを、もう一度見ている
- 見落としがないか、ぐるぐる見回している
- 「ここ、まだ見てなかったかな?」と迷っている
「いつもどおり」と言ったつもりでも、その「いつもどおり」が本人の中で曖昧だった。だから、確実性を求めて、何度も同じ場所を確認することになっていたんです。
「いつもどおり」では、伝わらない。
これは、私の伝え方の失敗でした。
次の時から、私は順番シートを作成しました。
「**左面 → 正面 → 右面**」
作業台の上に、こうした検査の順番をシートにして貼っておく。そして、一面一面、丁寧に見てもらうように説明しました。
結果、ムダな動きが消えました。
「次は正面」と一目で分かるから、迷わない。同じ場所を二度見ることもない。時間内に、確実に検査が終わるようになりました。
「いつもどおり」を、「左面 → 正面 → 右面」に変える。
たったそれだけで、現場のリズムが整いました。
うまく描けなくていい ── 図解の障壁を下げる

ここまで読んで、「図解と言っても、私は絵が下手だから…」と感じる方もいるかもしれません。
でも、安心してください。
図解は、上手さは関係ありません。
三角と四角と矢印。
あとは、いくつかの言葉。
これだけで、図解は十分機能します。
私自身、絵を描くのは得意ではありません。でも、ノートに四角を3つ書いて矢印でつなぐくらいなら、誰でもできます。
うまく描けなくていい、伝わればいい。
大事なのは、絵の上手さではなく「絵を渡そう」という気持ち。それさえあれば、紙とペンがあれば、誰でも今日から図解が始められます。
図解は「思いやりの姿勢」

最後に、私が大事にしている考え方をお伝えします。
図解は、テクニックではありません。
相手への、思いやりの姿勢です。
「言葉で伝えるだけでは、相手の頭の中に絵が描かれないかもしれない。だったら、絵を渡してあげよう。」── そう考えること自体が、相手目線です。
作業順番メモも、トラックの仕分け図も、検査の順番シートも、根っこは同じです。「相手が迷わないように」「相手が時間をロスしないように」── そんな気持ちから生まれた工夫です。
図解は、相手の頭の中に絵を描く、ささやかな手伝い。
言葉で伝わらない時の、最後で確実な手段です。
📖 もう一歩深く学びたい方へ
7つの習慣 ── シナジーを創り出す(第6の習慣)
「他者と協働して、想像以上の成果を生む」哲学を、もっと深く学びたい方へ。
7つの習慣の第6「シナジーを創り出す」── 図解は、一方的な説明ではなく、相手と一緒に考える対話のツール。
私が20年、何度も読み返している一冊を紹介しておきます。
次回から、伝える力編④へ
シリーズ次章「伝える力編④」では、伝える力をさらに磨くための工夫を、テーマに書いていきます。
今日の話が「視覚化(見える化)」だとすれば、次回はその次の一歩。引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。
言葉で足りない時、絵が橋になる
最後に、私の本音を一つ。
言葉で足りない時、絵が橋になる。
あなたが「説明したのに伝わらない」と感じた瞬間。それは、絵を渡すべき瞬間かもしれません。
三角と四角と矢印。
紙とペン。
これだけで、十分です。
うまく描こうとしなくていい。
ただ、相手の頭の中に絵を渡す気持ちで。
今日も、机の上から。
半径1m以内、1秒から、引き算から、流れから、他者から、目的から、相手から、そして、見える化から。
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